2006年 10月 05日
「まほろば鉄橋」 その④ |
単線で片側にひとつしかないプラットホームは、押すな押すなの人の波。
こんな時がこようとは、誰が考えただろう。
その昔、ひっそりとした駅に降りたつ少年だったぼくは、
その寂しさに驚いたくらいだった。
今は、家族連れ、カップル、女一人旅、そして、てっちゃん。
世の中変われば変わるものである。
ひっそりとした集落を散策する、寂しい男になるはずだったのだが・・・・(笑)
普段がこれほどにぎやかだったら、素直に喜べるのだが・・・複雑な思い。
それでも、昔の面影は残っている。
護岸工事を済ませて、整備される前の、あの辺で泳いだんや・・・。
肩を寄せ合うようにたっている民家は、何事もなかったように変わらない。
汗水たらして歩いた、餘部YHへの道は、記憶のかなたへ消え去って覚えがない。
こんなところに郵便局あったやろうか・・・?
建物は新しいが、局前には丸型ポストが佇んでいた。
昔から、ここにいたのだろうか?ちょっと愛おしくなる。
郵便局の丸ポストの横に腰掛けて、葉書を書いてみる。
この空気まで、届けばいいのに・・・・。かなわないけど気持ちだけ。
さっきまでしまっていた郵便局は休憩中だったのか?
書き終わったら、扉がひらいた。
切手を貼ってもらい、風景印を押して出してもらった。
ちょっと交わす言葉は、旅のエッセンス。
ぼちぼち歩きながら、鉄橋をフィルムに記憶に焼き付けてゆく。
おそらく、少なくともぼくがこの世を旅立つときまでは、残される記憶。
彼岸花が揺れる鉄橋の真下には、事故でなくなられた人の慰霊の観音様。
本当なら、次の列車で隣の「鎧」までゆくつもりだったが、
どうしても鉄橋を渡る列車を見ておきたかったので、そのまた次の列車に乗ることに。
列車を待つ間、念願だった青い海と戯れる、ゆっくりと過ぎてゆく時間。
この時間と空間に身をおくために、一日かけてここへやってきたのかぁ・・・
きてよかったなぁ・・・。
陽が傾いて、影が長くなってきた。
16:11発の列車がやってきた。
そろそろ、お別れのとき。
列車は、空をわたって、トンネルの闇に吸い込まれていった。
******************************************
香住からは、「はまかぜ6号」大阪行き。181系気動車。
昔懐かしい、国鉄の車両。昔は赤とクリーム色に塗装されていた。
いまは、グレーと青と白。
この車両も、もう長くはないだろう。
この旅の終わりには、ふさわしい列車だ。
エンジンのうなる音と、気動車独特の列車の揺れかたが心地よい。
暗闇迫る山陰本線をうなりながら駆けてゆく。
豊岡駅。短い停車時間に「幕の内弁当」を仕入れる。
腹が減っては・・・・・(笑)
ゆれる車内で、葉書を一枚書き終えると、とたんに睡魔に襲われた。
激しく揺れる古い列車は、ぼくにとってこの上ない「ゆりかご」だ。
大阪までは、近くて遠い道のり。
あとほんのすこし・・・・・
(完)
こんな時がこようとは、誰が考えただろう。
その昔、ひっそりとした駅に降りたつ少年だったぼくは、
その寂しさに驚いたくらいだった。
今は、家族連れ、カップル、女一人旅、そして、てっちゃん。
世の中変われば変わるものである。
ひっそりとした集落を散策する、寂しい男になるはずだったのだが・・・・(笑)
普段がこれほどにぎやかだったら、素直に喜べるのだが・・・複雑な思い。
それでも、昔の面影は残っている。
護岸工事を済ませて、整備される前の、あの辺で泳いだんや・・・。
肩を寄せ合うようにたっている民家は、何事もなかったように変わらない。
汗水たらして歩いた、餘部YHへの道は、記憶のかなたへ消え去って覚えがない。
こんなところに郵便局あったやろうか・・・?
建物は新しいが、局前には丸型ポストが佇んでいた。
昔から、ここにいたのだろうか?ちょっと愛おしくなる。
郵便局の丸ポストの横に腰掛けて、葉書を書いてみる。
この空気まで、届けばいいのに・・・・。かなわないけど気持ちだけ。
さっきまでしまっていた郵便局は休憩中だったのか?
書き終わったら、扉がひらいた。
切手を貼ってもらい、風景印を押して出してもらった。
ちょっと交わす言葉は、旅のエッセンス。
ぼちぼち歩きながら、鉄橋をフィルムに記憶に焼き付けてゆく。
おそらく、少なくともぼくがこの世を旅立つときまでは、残される記憶。
彼岸花が揺れる鉄橋の真下には、事故でなくなられた人の慰霊の観音様。
本当なら、次の列車で隣の「鎧」までゆくつもりだったが、
どうしても鉄橋を渡る列車を見ておきたかったので、そのまた次の列車に乗ることに。
列車を待つ間、念願だった青い海と戯れる、ゆっくりと過ぎてゆく時間。
この時間と空間に身をおくために、一日かけてここへやってきたのかぁ・・・
きてよかったなぁ・・・。
陽が傾いて、影が長くなってきた。
16:11発の列車がやってきた。
そろそろ、お別れのとき。
列車は、空をわたって、トンネルの闇に吸い込まれていった。
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香住からは、「はまかぜ6号」大阪行き。181系気動車。
昔懐かしい、国鉄の車両。昔は赤とクリーム色に塗装されていた。
いまは、グレーと青と白。
この車両も、もう長くはないだろう。
この旅の終わりには、ふさわしい列車だ。
エンジンのうなる音と、気動車独特の列車の揺れかたが心地よい。
暗闇迫る山陰本線をうなりながら駆けてゆく。
豊岡駅。短い停車時間に「幕の内弁当」を仕入れる。
腹が減っては・・・・・(笑)
ゆれる車内で、葉書を一枚書き終えると、とたんに睡魔に襲われた。
激しく揺れる古い列車は、ぼくにとってこの上ない「ゆりかご」だ。
大阪までは、近くて遠い道のり。
あとほんのすこし・・・・・
(完)
by bochibochi35
| 2006-10-05 08:48
| 鉄路はつづく